家族

急いで実家へ帰省すると…【16】

 

「父の状態は?」

 

救急隊員

「とりあえず意識は

ありますが、念のため病院で

検査をさせていただきます」

 

「分かりました。

ありがとうございます」

 

父が救急車に乗せられ、

サイレンを鳴らして

走り去っていく。

 

その後ろ姿を見送りながら、

複雑な思いが込み上げてきた。

 

「トウ子、病院に行きましょう」

 

「ええ…」

 

しかし、その時だった。

 

アキノ

「あ〜良かった〜。

お姉さん、戻ってきてくれたんだ~」

 

「え?」

 

アキノの声に、首筋が寒くなる。

 

心配そうな表情とは裏腹に、

どこか安堵の色が見えた。

 

ヒロヤ

「おい、アキノ!」

 

「ちょっと!!

アキノ!黙っていなさい!」

 

「…どういうこと?」

 

コウスケ

「待ってください。

さっきの救急車は本物でしたよね?」

 

ヒロヤ

「あ、あれは…」

 

「ヒロヤ、正直に話して」

 

目を伏せたまま、

ヒロヤが小さな声で話し始めた。

 

ヒロヤ

「…救急車は本物だよ。

でも、親父は…演技だった」

 

「…は?」

 

ヒロヤ

「姉ちゃんに

戻ってきてもらうために…」

 

私の中で、何かが切れた。

 

「…何考えてるのよ!!

ふざけないで!!!」