私
「父の状態は?」
救急隊員
「とりあえず意識は
ありますが、念のため病院で
検査をさせていただきます」
私
「分かりました。
ありがとうございます」
父が救急車に乗せられ、
サイレンを鳴らして
走り去っていく。
その後ろ姿を見送りながら、
複雑な思いが込み上げてきた。
母
「トウ子、病院に行きましょう」
私
「ええ…」
しかし、その時だった。
アキノ
「あ〜良かった〜。
お姉さん、戻ってきてくれたんだ~」
私
「え?」
アキノの声に、首筋が寒くなる。
心配そうな表情とは裏腹に、
どこか安堵の色が見えた。
ヒロヤ
「おい、アキノ!」
母
「ちょっと!!
アキノ!黙っていなさい!」
私
「…どういうこと?」
コウスケ
「待ってください。
さっきの救急車は本物でしたよね?」
ヒロヤ
「あ、あれは…」
私
「ヒロヤ、正直に話して」
目を伏せたまま、
ヒロヤが小さな声で話し始めた。
ヒロヤ
「…救急車は本物だよ。
でも、親父は…演技だった」
私
「…は?」
ヒロヤ
「姉ちゃんに
戻ってきてもらうために…」
私の中で、何かが切れた。
私
「…何考えてるのよ!!
ふざけないで!!!」