コウスケ
「気にするな。
むしろ君の強さに感動したよ」
娘
「ママ、もう大丈夫?」
私
「ええ、大丈夫よ。
ごめんね、
怖い思いをさせちゃって」
娘
「うん…でも、
おばあちゃんが泣いてた…」
私
「そう…だね」
娘の無邪気な言葉に、
胸が締め付けられる。
説明しようにも、
言葉が見つからない。
その時、携帯電話が鳴った。
画面を見ると、母からだった。
コウスケ
「出ないの?」
私
「…出るわ」
電話に出ると、
母の興奮した声が飛び込んできた。
母
「トウ子!
お願いよ、戻ってきて!」
私
「もう話すことはないでしょ」
母
「違うのよ!お父さんが…
お父さんが倒れたの!」
私
「え!?」
母
「急に胸を押さえて…
救急車呼んだんだけど…
トウ子、お願いよ。戻ってきて!」
私
「…分かったわ。今戻るから」
コウスケが
心配そうに私を見ていた。
コウスケ
「何かあったの?」
私
「父が倒れたって…。
戻らないと」
コウスケ
「うん、分かった。行こう」
再び実家に向かう車内は、
重たい空気に包まれていた。
父のことを心配する気持ちと、
これも嘘なのでは
ないかという疑いが、
私の中で渦を巻いていた。
実家に到着すると、
救急車が止まっていた。
父はストレッチャーに乗せられ、
救急隊員に介抱されていた。
母
「トウ子!来てくれたのね!」