家族

急いで実家へ帰省すると…【15】

 

コウスケ

「気にするな。

むしろ君の強さに感動したよ」

 

「ママ、もう大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫よ。

ごめんね、

怖い思いをさせちゃって」

 

「うん…でも、

おばあちゃんが泣いてた…」

 

「そう…だね」

 

娘の無邪気な言葉に、

胸が締め付けられる。

説明しようにも、

言葉が見つからない。

 

その時、携帯電話が鳴った。

画面を見ると、母からだった。

 

コウスケ

「出ないの?」

 

「…出るわ」

 

電話に出ると、

母の興奮した声が飛び込んできた。

 

「トウ子!

お願いよ、戻ってきて!」

 

「もう話すことはないでしょ」

 

「違うのよ!お父さんが…

お父さんが倒れたの!」

 

「え!?」

 

「急に胸を押さえて…

救急車呼んだんだけど…

トウ子、お願いよ。戻ってきて!」

 

「…分かったわ。今戻るから」

 

コウスケが

心配そうに私を見ていた。

 

コウスケ

「何かあったの?」

 

「父が倒れたって…。

戻らないと」

 

コウスケ

「うん、分かった。行こう」

 

再び実家に向かう車内は、

重たい空気に包まれていた。

 

父のことを心配する気持ちと、

これも嘘なのでは

ないかという疑いが、

私の中で渦を巻いていた。

 

実家に到着すると、

救急車が止まっていた。

父はストレッチャーに乗せられ、

救急隊員に介抱されていた。

 

「トウ子!来てくれたのね!」