母
「そ、そんなことないわよ!
ほら、ほらぁ〜え〜っと…」
私
「…もういいわ。
で、本当の理由は?」
父は大きく息を吐くと、
肩を落として話し始めた。
父
「実はな、俺たち…さっきも、
チラッと言ったと思うんだが
借金があるんだ」
私
「…」
母
「トウ子、お願いよ。今度も
私達を助けてくれないかしら?」
ヒロヤ
「いやぁ〜俺たち、
本当に困ってるんだ」
私
「困ってる?
10年前と同じセリフね」
過去の記憶が蘇る。
大学を卒業したばかりの私が、
必死で働いて両親と
弟の借金を返済した日々。
ありがとうの言葉はあっても、
私に対して
返済の話は一切なかった。
私
「いくら?」
父
「え?」
私
「借金の額よ」
母
「そうね…1000くらい
だったかしらね?」
私「え?ちょっと待ってよ。
1000万!?何に使ったの?」
ヒロヤ
「俺たちの結婚式とか…」
アキノ
「あと、あとぉ〜
新車も買ったしね〜
お姉さんも後で見ますぅ?」
私
「…結婚式に新車?
何考えてるのよ…」
父
「いや、それだけじゃ
ないんだ。実は…」
父の目が泳ぐ。
その様子に、既視感が走る。
私
「…ギャンブル?」
ヒロヤが顔を背けた。
その仕草で、全てを悟った。