家族

急いで実家へ帰省すると…【12】

 

コウスケ

「ねぇトウ子、

少し外で話そうか」

 

コウスケに促され、一旦外に出る。

背後から両親とヒロヤの声が

聞こえるけど、振り返らない。

 

外の空気を胸いっぱいに吸うと、

少しずつ頭が冷えてくる。

 

コウスケ

「大丈夫?」

 

「ごめんね、

こんな醜態を見せちゃって…」

 

コウスケ

「いいんだ。でも、

このまま帰っちゃっていいの?」

 

「…どういうこと?」

 

コウスケ

「せっかく来たんだから、

キチンと話をつけた方が

いいと思うんだ。

これが最後の

チャンスかもしれないし…ね?」

 

コウスケの言葉に、足が止まる。

確かに、このまま帰ってしまえば、

もう二度と会うことはないだろう。

本当に、それでいいのか…

 

深いため息をついて、

家の中に戻る。

 

リビングでは、両親と

ヒロヤ夫婦が固まったように

私たちを待っていた。

 

「話を聞くわ。

本当の理由を教えて」

 

「ほ、本当の理由って…」

 

「だから、それはちゃんと

伝えたじゃない?

孫に会いたいって…」

 

「嘘よ。孫に会いたいだけなら、

こんな大げさな歓迎はしないわ。

それに…娘のことなんて、

ほとんど気にしてないじゃない

なんなら、

一言も話してないんじゃない?

 

ヒロヤ

「姉ちゃん、

そりゃあ酷いよ…」

 

「じゃあ、

娘の名前言ってみて?」

 

重苦しい沈黙が流れる。

 

「ほら。答えられないじゃない。

知らないでしょ?」