家族

急いで実家へ帰省すると…【5】

 

コウスケ

「うん、分かるよ。

でも、行ってみても

いいんじゃない?

もし何かあっても、

俺がついてるから」

 

コウスケの言葉に、

少し肩の力が抜けた。

 

「…そうだね。

じゃあ、行ってみようかな」

 

コウスケ

「うん、そうしよう。

家族のことは、直接会って

話すのが一番だと思うし」

 

コウスケの温かい言葉に

背中を押され、帰省を決めた。

 

でも、胸の奥で不安が

渦巻いていた。

本当に大丈夫かな…。

そんな思いを抱えながら、

10年ぶりの帰省の日を迎えた。

 

実家がある地方都市へ

向かう車の中。

窓の外を流れる景色を見ながら、

懐かしさと不安で手が震えた。

 

「ママ、おじいちゃんと

おばあちゃんの家はまだ?」

 

「もうすぐよ。楽しみ?」

 

「うん!」

 

無邪気な返事に、

胸が締め付けられる。

この子に、私の複雑な

家族関係を知られたくない——。

 

高速道路を降りて、

昔と変わらない街並みを走る。

懐かしい風景が、

過去の記憶を呼び覚ます。

 

幼い頃、両親と遊園地に

行った思い出。

弟と喧嘩して泣いた日々。

そして、借金を肩代わり

するために必死で働いた日々…。

 

気がつけば、実家の前に

車が止まっていた。

 

「はぁ…来ちゃったね」

 

コウスケ

「大丈夫。

俺がついてるから」

 

夫の言葉で少し勇気が出て、

インターホンを押す。

 

アキノ

「はーい、

どちら様ですか?」

 

聞き覚えのない若い女性の声に、

戸惑いが込み上げる。

 

「あの、トウ子ですけど…」