コウスケ
「うん、分かるよ。
でも、行ってみても
いいんじゃない?
もし何かあっても、
俺がついてるから」
コウスケの言葉に、
少し肩の力が抜けた。
私
「…そうだね。
じゃあ、行ってみようかな」
コウスケ
「うん、そうしよう。
家族のことは、直接会って
話すのが一番だと思うし」
コウスケの温かい言葉に
背中を押され、帰省を決めた。
でも、胸の奥で不安が
渦巻いていた。
本当に大丈夫かな…。
そんな思いを抱えながら、
10年ぶりの帰省の日を迎えた。
実家がある地方都市へ
向かう車の中。
窓の外を流れる景色を見ながら、
懐かしさと不安で手が震えた。
娘
「ママ、おじいちゃんと
おばあちゃんの家はまだ?」
私
「もうすぐよ。楽しみ?」
娘
「うん!」
無邪気な返事に、
胸が締め付けられる。
この子に、私の複雑な
家族関係を知られたくない——。
高速道路を降りて、
昔と変わらない街並みを走る。
懐かしい風景が、
過去の記憶を呼び覚ます。
幼い頃、両親と遊園地に
行った思い出。
弟と喧嘩して泣いた日々。
そして、借金を肩代わり
するために必死で働いた日々…。
気がつけば、実家の前に
車が止まっていた。
私
「はぁ…来ちゃったね」
コウスケ
「大丈夫。
俺がついてるから」
夫の言葉で少し勇気が出て、
インターホンを押す。
アキノ
「はーい、
どちら様ですか?」
聞き覚えのない若い女性の声に、
戸惑いが込み上げる。
私
「あの、トウ子ですけど…」