家族

急いで実家へ帰省すると…【4】

 

「ママ、おひるごはんは?」

 

「あ、ごめんね。

もう少しだけ待っててくれる?」

 

仕事に集中して、娘のことを

後回しにしてしまうことがある。

そんな時、実家のことを思い出す。

 

母は仕事をしていなかった。

それなのに、私や弟の面倒は

ろくに見てくれなかった。

お金の無心ばかり。

 

この子には、絶対に

寂しい思いをさせない——。

そう心に決めて、

毎日を過ごしていた。

 

娘が5歳になったある日のこと。

突然、実家から

電話がかかってきた。

 

「トウ子?久しぶり。

元気にしてる?」

 

「…はい。どうかしました?」

 

「いや、特に何も。ただね、

孫の顔が見たいなぁって思って」

 

10年以上ぶりの母の声。

懐かしさと共に、背筋が凍る。

 

「それで、たまには

帰ってこない?

みんなで会えたらいいなぁって」

 

「…考えておきます」

 

受話器を置くと、

胃の辺りが重くなった。

 

確かに、娘を実家に

連れて行ったことはない。

両親にとっては、初孫なのだ。

 

でも、本当に孫に会いたい

だけなのかな…。

 

疑いの種が芽生える。

過去の経験から、両親の言葉を

そのまま受け取れなかった。

 

その夜、コウスケに打ち明けた。

 

「ねぇ、実は今日

実家から電話があって…」

 

コウスケ

「へぇ、珍しいね。

で、何て?」

 

「孫の顔が見たいって。

帰省しないかって

言われたんだけど…」

 

コウスケ

「トウ子はどうしたい?」

 

「正直、迷ってる。両親のことは

信用できないけど、

娘のことを考えると…」