私はトウ子。30代の会社経営者
として、夫のコウスケと
5歳の娘との3人暮らし。
両親と弟夫婦とは10年以上も
顔を合わせていない。
久しぶりの帰省で起きた出来事を、
今ここに記そうと思う。
朝5時、目覚ましが
鳴る前に目が覚めた。
習慣になっているストレッチを
済ませ、コーヒーを一杯。
そして、PCを開いて
仕事モードに入る。
私の会社は、
ITコンサルティング業
を営んでいる。
創業から7年、従業員50人を
抱えるまでに成長した。
ゼロからここまで来るのは
簡単じゃなかった。
でも、私には
仕事しか見えていなかった。
学生時代から、家族との
関係は冷めていた。
両親は借金を重ね、
私に尻拭いをさせようとした。
弟のヒロヤは、働きもせず
ギャンブル漬け。
そんな家族を見るのも嫌で、
大学卒業と同時に家を出た。
顔も見たくない。
そう思い込んでいた。
だから、仕事に没頭した。
朝から晩まで、休日返上で
働き続けた。
家族のことを
考えたくなかったから。
そんな私に転機が訪れたのは、
30歳の時だった。
私「…見合いですか?
申し訳ありませんが、
そんな時間はありませんね…」
取引先の社長に勧められても、
きっぱり断った。
でも、その社長が諦めなかった。
社長
「トウ子さん、一度
会ってみるだけでいいから。
私の甥っ子なんだけど、
君にぴったりだと思うんだ」
根負けして会ってみると、
穏やかな笑顔の男性がそこにいた。
その人が、夫になるコウスケ。