私
「検査の結果、
彼氏さんの精子は奇形率が
かなり高く、正常な精子が
1%あるかないか
というところでした。
正常な精子も運動率が
非常に低く、お子さんを
持つのは難しいと思われます」
突然の男性不妊宣告に
驚愕の表情を浮かべる夫。
私「一緒に検査報告を受けて
幸いだったかもしれません。
世の中の女性には、検査結果を
知っても相手の男性を
思いやるあまり
男性不妊について
知らせない方も大勢います。
愛する人を
傷つけたくないのでしょうね」
私は夫の目
をまっすぐに見つめて、
しかし淡々とした口調で伝えた。
というよりも、自然に
口をついて出てきたという方が
正しいかもしれない。
夫には、私の言外の意味が
伝わったのだろう。
バツが悪そうに目を逸らし、
小さくなっていた。
不倫中も堂々と私の目を
見返していたあの夫が、だ。
5年間、レスでもないのに
子どもができなかった
私たち夫婦。
職業柄、私が不妊症を
疑うのは当然だった。
そして私の検査結果は異状なし。
よほど相性が
悪いわけでもなければ、
夫の生殖能力に問題があると
私が結論付けたのは
言うまでもない。
だが、私は夫にその事実は
伝えなかった。
愛ゆえに。
傷つけたくないがゆえに。
職務とはいえ、その事実を夫に
突き付けることができた今
既に夫への愛は枯渇したと
再認識もできた。