しかし、医師として患者に
対応するわけだから、
できるだけ冷静に、
公私混同はしないように
努めなければならない。
それでも、何も言わずに
受診を終わらせるのも
癪ではある。
歯痒さを抱えたまま、
不倫相手の受診日を迎えた。
その日の朝、夫は
ヨシヒロ
「今日は、年の離れた
従妹と出掛けるよ。
希望していた会社に内定が
出たらしいから、そのお祝いに。
夕飯も一緒に食べてくるから、
俺の分はいらないよ」
上機嫌で出かけていった。
相変わらず、
浮気しているなどとは
微塵も感じさせない姿。
そのあまりの堂々っぷりに、
今まで
騙されて来たんだよなぁ…。
それも今日までだけどな!
ドキドキの診察時間が
スタートした。前回までと同様、
不倫相手の女性。
もとい患者さんに和やかに
挨拶する私。
公私混同は厳禁ですもの、
呼び方も患者さんに変更だ。
私
「こんにちは。
お加減はいかがですか」
患者さんに続いて
診察室に入って来た夫は、
私の声を聞くなり
ギョッとした顔で立ちすくんだ。
私
「え!あなた!?」