ごめんね。ママ、ちょっとだけ
無理をするからね…
お腹の子に心の中で
語りかけながら、
静かにドアを開けた。
後部座席に滑り込み、
大きな買い物バッグの
陰に身を隠す。
心臓が激しく鼓動している。
それから約1時間後、
マサナリとカナミの声が
近づいてきた。
二人は楽しそうに会話している。
車のドアが開き、
二人が乗り込んでくる。
マサナリが運転席に座り、
エンジンをかける。車が動き出す。
私は後部座席で身を潜め、
息を殺して二人の会話に
耳を傾けた。
同時に、そっとポケットから
スマートフォンを取り出し、
録音アプリを起動させる。
震える指で画面をタップし、
録音を開始。
これで会話の証拠が残せる。
これで、後で何度も聞き直せる。
絶対に逃さない！
これから何が起こるのか、
想像もつかない。
でも、もう後には引けない。
真実を、証拠を手に入れなければ。
心臓の鼓動が耳に響く。
スマートフォンを慎重に
ポケットに滑り込ませ、
動きを最小限に抑える。
これから何が起こるのか、
想像もつかない。
二人の会話が車内に響き始める。
私は全神経を集中させ、
一言も聞き逃すまいと
必死に耳を澄ませた。
録音はしているものの、この瞬間、
この場で、自分の耳で確かめたい。
生の言葉、その場の空気、
声のトーンや間。
それらすべてが、
私にとって大切な情報だ。
息を潜め、体を固くしたまま、
私は二人の言葉の一つ一つを
心に刻み込んでいった。
