「妻の妊娠中に夫が浮気三昧」
などというシチュエーションを
許せるわけもなく。
それを良く知っている夫も
顔色を失っていた。
義父
「このバカタレがあ！」
と一喝した義父は、
夫の首根っこをむんずと掴んで
出ていった。
あとで聞いた話によると
病院の廊下で大説教をかまして、
注意を受けてしまったらしい。
それでも、義父も私の味方を
してくれたことが嬉しかった。
陣痛室に残ったのは
私、アイリ、義母。
義母はおもむろに鞄の中から
チラシの裏とボールペンを
取り出し、
「離婚届」と書き出した。
そして、
義母
「はい、トウ子ちゃん、
名前書いて」
いや、あの…私陣痛で苦しいの…。
そうは思ったものの義母の勢いに
抗えず、
なんとか名前を書ききる私。
次に、
義母
「あんたも！」
と、アイリにもペンを差し出す。
戸惑うアイリ。
義母
「あんたが私の息子夫婦の
離婚の原因になったと認めたって
言う証拠にするんだから！」
と息巻く義母。
なるほど…。
法的な効果があるかは知らんけど。
半泣きで自分の名前を
書いたアイリを義母は、
もう用なしだとばかりに
陣痛室から追い出した。
