私
「にしても、お前ら。
限度ってもんが
あるだろうがよ!」
ドスを利かせた
私の低音ボイスに
室内は凍った。
夫はグラスを取り落とした。
ナツメだけは
私の豹変の意味がわからず、
キョトンとしている。
そんな顔が
できるのもここまで。
だって夫の浮気相手は、
このナツメなのだから。
凍った室内の緊張を
ほぐすべく、
私は声のトーンを元に戻す。
私
「ね!誰も歌わないなら、
私が
アレンジした曲でも聞いて!」
女性同僚
「わーなにそれ、
聞いてみたーい」
私が音頭を取ると、
夫とナツメを冷たい目で
見ていた女性陣が
すかさずサポート。
女性たちの空気を感じ取った
男性陣は決まりが
悪そうにしていた。
男性同僚
「おい、
嫁さんキレてねぇ?」
と夫の脇を小突く同僚もいた。
私はそ知らぬふりをしながら
スマホを取り出し、
カラオケルームの大画面に
映像と歌詞が流れるように
端末を操作した。
今はこんな機能もあって、
便利なモンだよね。