「思っていたのと違う」と
後悔することが
いくつも出てきても仕方ない。
けれど、時間をかけて
歩み寄っていくのが
夫婦なんだと私は思っていた。
私がそのタイミング
を計っている間に、
夫の方はどんどん
趣味が変わっていった。
まず、音楽。
流行のJ-POPを普通に
聞く程度だったのが、急に
クラシックにハマり始めた。
しかも、楽団や指揮者にまで
こだわって聞き比べを
しているようだった。
私にはそんな違いなんて、
サッパリ。
その頃も出勤時は一緒に車に
乗っていたから、
この変化はすぐにわかった。
それに、服や小物の好みも
少し変わり、アクセントや
差し色にまで
気を遣うようになった。
軽く梳るだけだった髪も
スタイリング剤を
使うようになったし、
口腔ケアは歯磨き粉くらいしか
使っていなかったのに、
歯間ブラシやマウスウォッシュ
も使うように。
ここまであからさまになると、
鈍い私でも「あれ?もしや」と
思うようになった。
それが確信に変わったのは
程なくだった。
その日、私は朝から
軽い倦怠感を覚えていた。
出社して1時間もしないうちに
頭痛と寒気、手足の筋肉痛
に襲われた。