浮気

私の貯金を充てにして駆け落ちした夫【8】

 

最終的に私の同意が

あったとはいえ、ほぼ勝手に通帳を

持ち去っておいて、残高に

ケチをつけるとは図々しい。

 

ナナコ

「これって、

嫌がらせのつもりですか!?」

 

夫の後ろにいた女性も

一緒に私を詰る。

彼女こそがナナコ、

つまり夫の浮気相手だった。

 

「どうもこうも、

その残高8円の通帳を欲しがったのは

あなたじゃない」

 

アキナ

「8円?スーパーの駄菓子でも

買える物、あるかな?」

 

外からの音が怖くて私にピッタリと

くっついてきたアキナだったが、

「残高8円に父親が

文句をつけている」

というシチュエーションに驚いて、

思わず言葉が

漏れてしまったようだ。

 

「お前、マイホーム資金を

貯めてるって言いながら

使い込んでたんじゃねーか!」

 

ナナコ

「詐欺よ、詐欺!」

 

これにはちょっとした

カラクリがあった。

 

私は前回の夫の使い込みが

あってから、この口座が

危ないと思っていた。

 

だから、独身時代というか、

小学生の頃から持っていた

別の口座に

ほぼそっくり移し替えた。

 

8円だけ残っていたのは、

私が数字の入力を

ミスってしまったせい。

 

たった8円だからいいかなって。