浮気

私の貯金を充てにして駆け落ちした夫【7】

 

眠い。私は睡魔に負けて、

スマホをサイレントモードにし、

2度寝した。

 

チャイムでは飽き足らず、

ドアを荒々しくドンドンと

叩く音も響いてくる。

 

「おい、俺だ!

ここを開けろ!開けないかー!」

 

アキナ

「パパの声?」

 

「そうみたいね」

 

ちょ、アンタ昨日の朝、

家の鍵を置いて

出ていったでしょうが!

言うに事を欠いて、

「開けろー!」

はないでしょう。

 

腹筋崩壊するかと思った。

 

私と娘はゆっくりと着替え、

それから玄関の鍵を開けた。

 

「ト、トウ子!何だこれは!?」

 

「ああ、あなたが

持っていった私の通帳でしょ?」

 

「違う、そうじゃない!

なんで残高が8円なんだ!」

 

離婚届を置いて姿を

くらませた翌日によく

戻って来られたものだと思ったが、

その原因は預金残高のせいだった。