夫
「俺たちは子どもが
欲しくて妊活して、
不妊の検査まで受けたんだ。
で、お前には子どもが
望めないってわかった。
もう1度言うけど、
俺は俺の子がほしい。
俺のお袋と親父も、俺の血を
受け継いだ孫が欲しい。
言いたいこと、わかるか?」
理解はできる。
けれど、頷きたくはなかった。
フリーズしている私に
イラついたのか、夫は
1枚の用紙を取り出して
突き付けた。
夫
「これ、離婚届。
キヌ子の所を書いてくれれば、
他はこっちで書くし、
役所にも届けておく。
入院手続きをしたんだから、
印鑑は持ってるだろ?」
私
「こんな、急に…?」
夫
「急ってわけでもないだろ。
最近俺たちは意見が
合わないことだらけ。
唯一一致していたのは
子どもが欲しいってことぐらい
だったのに、お前はガンで
子どもも産めなくなると来た。
一緒にいる意味、あるか?」
何も言えない私に、
義両親が追い打ちを掛ける。
義母
「あなた、不妊検査を
息子に
付き合わせたそうじゃないの。
その結果がコレでしょう?
本来なら息子を解放して
あげようって考えるのが、
妻としての
最後の愛情の示し方…
なんじゃないのかしら?」
義父
「子どもを持って
初めて人は1人前になるんだ。
私は息子には1人前の男に
なってほしい。
なりたくてなる病気じゃないの
はわかるし、君が悪かったとは
思わない。
けれど半端者にしかなれない
キヌ子さんと息子では
つり合いが取れない」