キヌ子
「高熱で苦しんでいる娘に
食事も与えず、置き去りにして
遊びに行ったことも。
全部冗談だったんですね」
相当低い声だったと思う。
冷たい声だったと思う。
夫は、弁護士さんと
私の顔色を窺った後、
ようやく本気だと悟った。
夫の顔色が一気に青ざめていった。
その後はみっともないほど
グッチャグチャに泣いて、
土下座のバーゲンセール。
リョウ
「お願いだ!離婚なんて嫌だ!
…頼むよ。
お前たちなしでなんて、
生きていけない!!」
…本当にそう思ってる?
私とリコがいないと
生きていけないのなら、
どうしてこんなに
蔑ろにしてきたんだろう。
それを坦々と伝えると、
リョウ
「離婚なんて部長に知られたら、
どうなるかわからないんだよ」
あ〜、そっちが本音か。
休日に上司の趣味に
付き合わせるような気風の
会社だしなぁ…
と、その時は思った。
実は、夫の会社の上司たちが
【男は妻子を不自由なく
食わせてナンボ】
という、昔気質なのは本当なんだ。