職場の人
「すぐに家に帰ってください!
キヌ子さんの仕事は
今日は片付きましたよね!」
と、すぐに帰宅するように促された。
職場の環境には本当に恵まれたと思う。
自宅に到着したのは
午後2時を少し過ぎた頃だった。
玄関を開けてすぐ
キヌ子
「リョウいる!?
リコちゃん!?
どうしてるの!?」
と、室内に入っていった。
案の定、夫の姿は
家のどこにもなかった。
娘は寝室で顔を真っ赤にして、
苦しそうな息をしながら
横になっていた。
その様子に、頭の中の血が
怒りで沸騰するかのような
感覚を覚えた。
リコ
「ママ…パパ…」
ベソをかきながら
うなされるように呟く娘に、
私は我に返った。
とりあえず、
状況把握のために検温だ。
リコの熱は39度近くあった。
これは大人でも辛い。
薬はどこに…?
すると、朝、
夫に託した診察券と保険証が
テーブルの上に
乗ったままなのに気が付いた。
動かした形跡はない。