キヌ子
「冷蔵庫にある
ピーチゼリーか、
プレーンのヨーグルトを
あげてちょうだいね。
それなら食べてくれると思うから」
忙しい朝の時間の合間を縫って
説明をしてるのに
リョウ
「あ~、はいはい。
なんとかなるって」
と、非常に適当な返事が返ってきた。
一抹の不安はあったが、
私は仕事に出かけた。
そして、その予感は的中した。
仕事中もリコの容態が心配で
何度かLINEを送ったのだが
夫からの返事も
なんというか…すごく曖昧で。
キヌ子
「ねぇ、病院で診てもらった?」
リョウ
「…うん。
風邪みたいなもので
大したことないってさ」
お医者様が
風邪「みたいなもの」
…なんて言い方する?
キヌ子
「処方された薬を教えて。
薬の名前だけでもいいし
薬袋の写真でもいいから送って」
…と、LINEを送ったら
それ以降、連絡が途絶えてしまった。
その後も何度かLINEを送ったが
ついには既読すらつかない。
血の気が引くってこのことかと思った。
耳の奥で本当に【サーッ】って音が
聞こえた気がした。
その後は、とにかくかつてないほどの
スピードで仕事を片付けた。
そして職場の上司や同僚に、
娘が熱を出して1人で
家にいるかもしれないことを伝えた。