私
「嫌。それよりも慰謝料と養育費が先」
…と、にべもなく断ると
トウマ
「なんだよ!?
俺が下手に出れば調子に乗って!
この…!」
元夫が腕を大きく振り上げたところで、
動きが止まった。
父
「うちの玄関先で何をしてるんだ!」
父が元夫を一喝した。
私の父は元プロボクサーで
現ボクシングジムの
オーナー兼トレーナー。
その辺の同世代どころか、
20代30代の平均的な男性と比べても
遥かに筋肉質だ。
そんな父を、顔合わせの時から
元夫は苦手にしていた。
トウマ
「あの、えっと、いえ、
なんでもありません…」
と、蚊の鳴くような声で答えるのが
精一杯の元夫。
父は元夫に歩み寄り、
胸倉を掴んで吊し上げた。
父
「おい、俺の娘に今度
手を上げるような
素振りを見せてみろ!?
その時は俺が相手になってやるからな!
わかったか!」
ブンブン揺さぶりながら
ドスを聞かせた声で元夫を怒鳴りつけた。
元夫は振り回されたせいなのか
恐怖からなのか、
歯をガチガチさせながら
トウマ
「す、すみません…。謝ります。
2度とお嬢さんには近づきません…」
這う這うの体で帰って行った。