帰り際にもこちらを振り返りながら
ユリエ
「絶対よ!絶対別れなさいよ!」
念押ししてくるユリエは恐怖だった。
私は息子の荷物を数日分まとめ、
息子が帰ってくるとすぐに
実家に預けに行った。
事情を知って、私の両親も
可愛い孫に何かあったら大変だと
快く引き受けてくれた。
しばらく息子は、
実家から幼稚園に通うことになる。
実家が近くて本当に良かった。
私は家に出る前に
一緒に持ってきた離婚届を
帰宅がてら提出した。
自分の記入欄と日付を
埋めるだけだったので楽だったし、
不備もなくあっさりと受理された。
これで夫とは赤の他人になれた。
いつも通りの時間に帰宅した夫は、
息子の不在を不思議がる。
トウマ
「レンはどうした?どこにいるんだ?
いつもなら【お帰り!】って
言ってくれるのに…」
私
「レンは私の実家。
しばらく帰ってこないわ」
トウマ
「なぜだ?」
私
「…ねえ、トウマ。
今日、ユリエさんって人が家に来たのよ」
そう言うと硬直する夫…
もとい元夫。