義母も、意味を理解したようだ。
へ、とか、あっとか、
へんな声が出ている。
そのうち
「誰だ、こんな事をしたのは!」
と、凄い怒鳴り声がした。
あっというまに電話が切れた。
私は、仕事仲間と顔を見合わせた。
こうしてはいられない、
とにかく厨房へ行って様子を見なければ。
親戚一同が駆け付けた問題の厨房では、
床にめり込むのではないかと思うほど、
小さくなって土下座の姿勢でいる義母と、
怒りの大声が止まらない板長、
父を含んだ険しい表情の料人達が、
押し合いへし合いしていた。
手短な説明によると、
義母は、私が作ったと勘違いした、
本物の献立合わせ会向け料理を、
台所へ流したというのだ。
どうやら私のお品は、
本当のお品と、
一部が被っていたらしい。
何を出すかは義母に
聞かれて答えていたから、
疑わずに捨てたのだろう。
正式な出席の資格が無い私は、
他の方のお品を知らなかった。
本来、違う物を出すよう、
担当者同士ですり合わせている。
飛び入り要素の私など、
誰も考慮しなかったのは当たり前だ。
実父「どういう事ですか、
これは。
娘が出す品と間違えた?
何を言ってるんですか。
娘は仕事です、
厨房に入る立場ではない」