そういう考えから、
父が、私を調理場へ追い立てて、
泣くまで特訓したものだ。
このような一種の修行を、
実家では「お仕込み」と呼んでいる。
少なくとも和食の膳を
ととのえる事にかけて、
相応の自負があった。
その料理を
義母「美味しくないわ。
何だか、化学調味料の味がする」
「おだしは何を使ったのかしら。
えっ、合わせだしなの?
お魚のお煮つけに、カツオを?
魚に魚の味をかぶせるのは、
ご法度ではなくて?」
ちくちくとけなす。
化学調味料は使っていません。
合わせだしではありません。
昆布と干しシイタケの
精進(しょうじん)だしです。
はっきり言いたい。
指摘したい。
でも、言っても無駄だ。
口答えと受け取られる。
仕方がなく
キヌ子(しきたりのお仕込みに、
口答えは厳禁よ)
言いたいことを飲み込む。