母
「娘はハヤテさんと
絶対に結婚しない、
とまでは申しておりません。
そちらが提示したように
こちらも譲れない条件を
提示したまで。
すり合わせが
できないというのであれば、
どうぞそちらから
婚約を破棄してくださって
かまいませんよ」
母の追撃にハヤテの母親は
もう、何も言い返せなかった。
しばらく誰も何も
言わなかった。
そこにインターフォンがなる。
自分たち以外にも訪問者が
いたのかとハヤテと母親は
驚いた様子だったが、
私たちは平然としていた。
リビングにやって来た訪問客は
挨拶をした。
ワタナベ
「初めまして。
私、弁護士の
ワタナベと申します。
キヌ子さんから結婚前の
浮気についてご相談が
ありましたので、
伺いに参りました」
ハヤテはとめどなく流れる汗を
ハンカチで拭き、
ハヤテの母は
目を白黒させていた。
脅しだと思うけど、
ハヤテからは今回のゴタゴタで
「結婚詐欺で訴える」という
言葉を浴びせられていた。
なので、大事をとって弁護士を
手配しておいた。
ハヤテ母が日時を指定してから
あまり時間がなかったので、
父の勤務先の顧問弁護士を
頼って、この手の話に
強い弁護士さんになんとか
依頼することができた。