私
「違う、違うよ!
逆だって。
こんな条件、
受け入れる人なんていないよ」
ハヤテ
「何を言ってるの?
全部、常識的なことしか
書いてないでしょ?
キヌ子ってそういうことに
無頓着な家庭で育ったの?
大丈夫?
これから母さんに
1から教えてもらえば
いいんだよ。
キヌ子ならやれるよ」
私
「ありえない…。
私、失礼するわ」
ハヤテ
「あ、待って!」
天国から地獄の底に
叩き落された気分だった私は、
ハヤテをレストランに
置き去りにしてさっさと
エレベーターに乗り込んだ。
これまで具体的に
結婚の話はしたことが
なかったにしろ、ここまで
結婚観というか夫婦としての
価値観が違う人だとは
夢にも思わなかった。
自分の考えや思想を絶対だと
思っていて、歩み寄りの
姿勢すらないことも
不安材料だった。
それでも、まだハヤテ本人の
ことは好きだという気持ちはあった。
最悪な記念日の後、
ハヤテからは電話の着信や
LINEがひっきりなしに届いた。
着信はミュートにして出ず。
LINEにはしきりに
弁明の言葉が並んでいた。