フク
「いいえ、こちら
手違いではございません」
フク弁護士の声に、
いつもの冷静さが感じられた。
フク
「さあ、本番は
これからでございます」
襖を開け放つ音が、
はっきりとイヤホンに響いた。
ジロウ
「いよいよですね、
キヌ子さん」
私は深呼吸をした。
ここからが本当の勝負だ。
夫の浮気の証拠を
掴むだけでなく、私自身の
人生の岐路に立っているのだと
実感した。
フク弁護士が襖を開け放つと、
そこに立っていたのは私。
夫とアケミの顔が見る見る内に
青ざめていく様子が
手に取るように分かった。
夫
「あ…あっ…」
アケミ
「な、なななな…」
碌に言葉も発せられない
2人を見て、私は笑いださない
ようにするのが大変だった。
でも、ここは冷静に。
深呼吸をして、穏やかな口調で
話し始めた。
私
「どうかな?私からの
サプライズプレゼント。
気に入ってくれた?
罠とも知らず、道中も部屋でも
すごく楽しそうだったねっ」
ヒュウガの顔が怒りで
真っ赤になった。
夫
「お、おまっ!!
俺たちを嵌めたのか!」
アケミ
「酷い!
こんなことするなんて…」