モラハラ

モラハラ夫の成れの果て…【19話】

 

イヤホンを通して、廊下を

歩く足音が聞こえてきた。

そして、聞き覚えのある声が…

 

フク

「お客様、

こちらでございます。

本日の特別会場に

ご案内させていただきます」

 

私は思わず息を呑んだ。

 

フク弁護士の声だ。

仲居さんに扮している。

 

ジロウさんが小声で

説明してくれた。

 

ジロウ

「フク先生なら、

証拠として最も有効な状況を

判断できますからね。

 

それに、万が一の

トラブルにも対処できる」

 

フク弁護士の機転と勇気に

感謝しつつ、これから起こる

出来事に身構えた。

 

「おお!いよいよだな」

 

アケミ

「ねえねえ♪

ヒュウガ君♪

私、ワクワクしてきちゃった」

 

ヒュウガ・アケミ

「まっぐろ♪まっぐろぉ♪」

 

その歌声に、私は

苦笑せざるを得なかった。

 

こんなにも上機嫌な

夫の声を聞くのは久しぶりだ。

 

複雑な思いを抑えつつ、

私は聞き続けた。

 

フク

「では、こちらが

本日の会場でございます」

 

襖の開く音。そして…

 

「え?」

 

アケミ

「あれ?」

 

二人の声に戸惑いが混じる。

 

「おい!なんだよこれ!

マグロ料理は?」

 

アケミ

「マグロづくしの

コースって聞いてたんだけど…

なにこれ?」