モラハラ

モラハラ夫の成れの果て…【11話】

 

ジロウ

「ヒュウガさんと、

ある女性との食事やお出かけの

場面は撮影できました。

ここ、ここ、

そしてここですね」

 

私は息を呑んで

写真を見つめた。

 

確かに夫の姿があった。でも…

 

ジロウ

「ただ…

申し訳ありません。

所謂男女の関係を裏付ける

決定的な証拠は、

まだ手に入れられていません」

 

「そうですか…」

 

私も家で夫のスマホを見る

機会があったけれど、

画面に映る通知や、

夫が操作しているときに

ちらりと見える内容からは、

次に会う予定の話は

垣間見えても、親密な関係を

示すようなものは

見つけられなかった。

 

ジロウ

「これ、旦那さんは

相当用心深いですね。

僕としても浮気については

黒の印象です。

もう少しお時間いただいても

よろしいですか?」

 

探偵さえも唸らせる夫の

徹底した隠しぶり。

私は複雑な思いで頷いた。

 

イチロウ

「焦る必要は

ありませんよ。証拠集めは

慎重に進めましょう」

 

フク

「そうですね。

キヌ子さん、

お疲れさまでした。今日は

ゆっくり休んでくださいね」

 

事務所を後にする時、

私の心は不安と決意が

入り混じっていた。

 

これが長い戦いの

始まりなのだと、その時

初めて実感したのだった。

 

ある日、パート先のスーパーで

商品を陳列していると、突然、

ミヤコ先輩が声をかけてきた。

 

ミヤコ

「キヌ子ちゃん、

また悩みでもできた?」

 

「え?」

 

私は驚いて振り向いた。

ミヤコ先輩は本当に

よく人のことを見ている。

 

その鋭い洞察力に、

いつも感心させられる。