モラハラ

モラハラ夫の成れの果て…【9話】

 

フク

「いえいえ、ご心配なく。

先日ご依頼いただいた時に

お話ししたように、

追加料金なんて

掛かりませんよ。」

 

フク弁護士は

少しおどけた口調で言い、

緊張していた私の肩の力が

少し抜けた。

 

イチロウ

「そういえば、

先ほどのお話で旦那さんの

浮気の証拠は押さえていないと

仰ってましたよね」

 

カツベ弁護士が突然、

話題を戻した。

 

「はい…お恥ずかしながら、

そういったことには

気が回りませんでした」

 

申し訳ない気持ちで、

思わず目を

下に向けてしまった。

 

イチロウ

「責めているわけでは

ありませんよ。

ただ、もし証拠があれば有利に

なりますから…

それなら上の階の探偵に

素行調査を

依頼するのはどうですか?」

 

「探偵ですか…

そういう方法もあるんですね」

 

少し驚きつつも、

興味を持って聞き返した。

フク弁護士が穏やかな笑みを

浮かべながら

説明をしてくれた。

 

フク

「そうなんです。

実は、さっき事務所に

入ってきたのはカツベ先生の

弟のジロウさんなんです。

彼が上の階で探偵事務所を

営んでいるんですよ」

 

「そうだったんですね。

でも、探偵さんに

依頼するって…」

 

イチロウ

「うちの弟、

腕は確かですよ。もちろん、

強制ではありません。

ただ、選択肢の一つとして

ご検討いただければと」

 

カツベ弁護士は穏やかに、

でも自信を持って言った。

 

私は少し考え込んだ。

確かに証拠があれば

有利になるだろう。

 

でも探偵を雇うなんて…

 

現実味がなく、

少し戸惑いを感じた。