モラハラ

モラハラ夫の成れの果て…【8話】

 

「はい…私、

決心がつきました。

お二人にお願いしたいです」

 

フク弁護士とカツベ弁護士は

互いに顔を見合わせ、

そっと頷いた。

 

イチロウ

「分かりました。

キヌ子さんの

新しい人生のために、

私たちにできることを全力で

支援させていただきます」

 

事務所を出る準備をしていた

私の心は、不安と希望が

入り混じった複雑な

思いでいっぱいだった。

 

でも、初めて訪れた時とは

明らかに違う。

今の私には、前を向いて

歩き出す勇気があった。

 

フク弁護士が優しい香りの

ジャスミンティーを

淹れてくれ、その香りに

包まれてほっと一息ついた

その時だった。

 

突然、事務所のドアが

ノックもなく開いた。

 

ジロウ

「兄貴、入るよ~。

例の件の報告だけど…」

 

中年の男性が顔を覗かせたが、

私の姿を見るなり慌てた様子で

言葉を切った。

 

ジロウ

「あ!失礼しました。

改めますね」

 

そう言うと、素早くドアを

閉めて去ってしまった。

 

その慌ただしさに、

思わず苦笑してしまう。

ふと壁に掛かった時計に

目をやると、予定の相談時間を

20分も過ぎていた。

 

「あ!!もうこんな

時間ですね。

次のご予定もあったのに、

申し訳ありませんでした。

追加料金は…」

 

私は思わず

財布に手をやったが、

フク弁護士は優しく手を

振って制止した。

依頼を引き受けてくれてから

初めての追加相談だったので、

料金のことが

気になっていたのだ。