「ここまで準備が
できたのなら、腹を括ろう」
そう自分に言い聞かせ、
私は重い足取りで
弁護士事務所へと向かった。
弁護士事務所の
ドアを開けると、緊張で
震える私を
出迎えてくれたのは、30代後半
くらいの女性だった。
スーツの襟元に輝く
正義の女神のバッジを見て、
「この人が弁護士なんだ!」
と気づき、
さらに身構えてしまった。
女性は優しく微笑みながら、
自己紹介をしてくれた。
フク
「初めまして、
キヌ子さん。
本日お話を伺います、
フク マツリと申します。
もう1人、弁護士が
同席いたしますので、
少々お待ちください」
そう言うと、
フク弁護士は私を応接室へと
案内してくれた。
しばらくすると、50代くらいの
男性弁護士が入室してきた。
イチロウ
「お待たせしました。
初めまして、弁護士の
カツベ イチロウです。
お申し込みのフォームから、
事情は把握している
つもりですが、改めて
ご説明願えますでしょうか」
2人の弁護士を前に、
私は深呼吸をして話し始めた。
私
「はい…
私の夫なんですが…」
途中、言葉に詰まったり、
涙が溢れたりして、
何度も話が止まってしまった。
でも、フク弁護士と
カツベ弁護士は辛抱強く
私の話に耳を傾けてくれた。
フク
「ゆっくりで
大丈夫ですよ、キヌ子さん。
お時間は
たっぷりありますから」
イチロウ
「そうですね。
焦る必要はありません。
できる限り
詳しくお聞かせください」