モラハラ

モラハラ夫の成れの果て…【5話】

 

ミヤコ

「なんだい!?

そのクズ男は!?

アタシがキヌ子ちゃんの親なら

即刻離婚を勧めるよ!…って、

よそ様の家庭にここまで

口出ししちゃいけないね」

 

ミヤコさんは一旦

深呼吸をして、

落ち着いた口調で続けた。

 

ミヤコ

「でもね、このまま

息子君が大きくなるまで

我慢するって、変だよ。

母親だって自分の人生を無駄に

しちゃだめだ。

何より、息子君が大きくなって

自分のせいで母親が我慢

しっぱなしだったって

息子君が進路を

選ぶ時や結婚するときに

キヌ子ちゃんの意思に反する

行動をしたとして尊重できる?

『私は苦労して、我慢して、

息子を育てたのに!』って、

息子君を束縛しかねないとは

思わないのかい?」

 

ミヤコさんの言葉一つ一つが、

私の心に突き刺さった。

 

今まで考えもしなかった視点を

突きつけられ、私は思わず

項垂れてしまう。

 

「そう…ですよね。

そこまで

考えていませんでした…」

 

ミヤコ

「ああ!キヌ子ちゃんを

責めてるワケじゃないんだよ。

でも、このままだと埒が

明かないねぇ。弁護士に

相談してみたらどうだろう?」

 

「べ、弁護士ですか!?

私、そんなお金なんて…」

 

ミヤコ

「世の中には

依頼前に無料相談をしてる

弁護士なんて、

掃いて捨てるほどいるんだよ。

私も離婚問題に強い事務所を

知ってるから。

あ、もう予約入れちゃおうね」

 

そう言うとミヤコさんは、

スマートフォンを取り出して

サクッと操作を始めた。

 

私が状況を把握する前に、

予約が完了してしまった。

その行動力に、

私は舌を巻くばかりだった。

 

数日後、

予約の日がやってきた。

朝から胃がキリキリと痛み、

何度も予約を

キャンセルしようと思った。

 

でも、ミヤコさんの言葉を

思い出すたびに、

微かな勇気が湧いてきた。