実際に直接暴力を
振るわれたことはない。
それでも、恐怖は常に
私の心の中に潜んでいる。
夫のヒュウガは180センチを
超える長身で、
筋肉質な体つき。
対して私は155センチほどの
小柄な体格。
その体格差だけでも、
十分に威圧感がある。
ヒュウガが
怒鳴り声を上げると、
その轟音が家中に響き渡る。
大きな手を振り上げ、
今にもつかみかかりそうな
勢いで詰め寄ってくる姿に、
私は思わず目を
閉じて身を縮める。
私
「ご、ごめんなさい…
もう二度と言いません…」
震える声で謝罪の言葉を
繰り返す私。
心臓が激しく鼓動を打ち、
冷や汗が背中を伝う。
ヒュウガが素面の時は
まだいい方だ。
本当に恐ろしいのは、
彼が酒を飲んでいるとき。
夫
「オイ!飯は
出来てんだろうなッ!?」
玄関から聞こえる酔った
夫の声に、私は緊張が走る。
足取りの不安定な音が
近づいてくる。
私
「ご、ごめ…ん
あ、あと5分くらいで…」
夫
「なんだと!?
5分?ふざけてんのか!!」
怒鳴り声と共に、
ダイニングテーブルが
倒れる音。
割れる皿の音。
私は思わず身を竦ませる。
こんな光景は
もう何度目だろう。
割れた食器、へこんだ壁、
壊れた家具…
数え上げればきりがない。