モラハラ

モラハラ夫の成れの果て…【2話】

 

実際に直接暴力を

振るわれたことはない。

 

それでも、恐怖は常に

私の心の中に潜んでいる。

 

夫のヒュウガは180センチを

超える長身で、

筋肉質な体つき。

 

対して私は155センチほどの

小柄な体格。

その体格差だけでも、

十分に威圧感がある。

 

ヒュウガが

怒鳴り声を上げると、

その轟音が家中に響き渡る。

 

大きな手を振り上げ、

今にもつかみかかりそうな

勢いで詰め寄ってくる姿に、

私は思わず目を

閉じて身を縮める。

 

「ご、ごめんなさい…

もう二度と言いません…」

 

震える声で謝罪の言葉を

繰り返す私。

 

心臓が激しく鼓動を打ち、

冷や汗が背中を伝う。

 

ヒュウガが素面の時は

まだいい方だ。

本当に恐ろしいのは、

彼が酒を飲んでいるとき。

 

「オイ!飯は

出来てんだろうなッ!?」

 

玄関から聞こえる酔った

夫の声に、私は緊張が走る。

 

足取りの不安定な音が

近づいてくる。

 

「ご、ごめ…ん

あ、あと5分くらいで…」

 

「なんだと!?

5分?ふざけてんのか!!」

 

怒鳴り声と共に、

ダイニングテーブルが

倒れる音。

 

割れる皿の音。

私は思わず身を竦ませる。

 

こんな光景は

もう何度目だろう。

割れた食器、へこんだ壁、

壊れた家具…

数え上げればきりがない。