浮気

帰宅後、間女にばったり会ったので最高の笑顔でおもてなししてみた【11】

 

初の「アンタ」呼びに驚いたのか、

けんもほろろな態度に

取り付く島もないと悟ったのか、

夫はそれ以上何も言わなかった。

夫を置き去りにした私たちは、

近所の居酒屋に向かった。

居酒屋の喧騒の中なら

本妻と浮気相手という緊張感が

薄れてくれるかもと

期待したのだ。

席に通されてもマホは

項垂れたままだった。

 

「好きな飲み物はなに?

私はビールにするけど、

あなたは?

カクテルの方がいい?」

 

 

マホ

「私も、ビールで…、

あっ、ビールがいいです…」

 

緊張していたようだが、

小さな声で返してくれた。

彼女が

ビールで」

と言いかけて

「ビールが」

言い換えたことに

何故か好感度がアップした。

私がビールに口をつけても、

固まったままのマホ。

私は半ば強引にグラスを

合わせて乾杯の形にし

 

「ささ、女同士飲みましょ」

 

アルコールが入って

少し緊張がほぐれたところを

見計らい、私は二人の馴れ初めや

夫がどのように彼女を

騙していたのか聞き出した。

マホはカフェの

アルバイトスタッフで、

夫がそこに通ううちに

親しくなった。

優しく人当たりの良い性格に

惹かれたこと。

結婚の話をされて嬉しくて

舞い上がってしまったことなどを

話してくれた。