夫
「マホが作ると
何でも美味しいよ。
姉貴と俺じゃ、好みの味が
違うみたいでさ。
たまに新作の実験台に
されて参るよ。この前も平気で
失敗作を出してきたから、
頭にきて怒鳴りつけてやったw」
マホ
「お姉さん、仕事もして
料理もしてくれるんでしょ?
そんな風に言ったら悪いわ。
少し多めに作っておくから、
もしよかったら
お姉さんにも食べてもらって」
私の料理をずっと
好みじゃないと思っていたのか、
私の方が年下なのに
「姉」扱いか、ふ~ん…。
頭の中がすぅっと
冷えていく感覚を覚えた。
それと同時に、マホって子が
そんなに悪い子では
ないような気もしてきた。
本当に「姉」を気遣っている
声色だったからだ。もしかして、
この子も夫に騙されているのでは
ないだろうか。
私はここで乗り込んでも事態を
混乱させるだけだと判断し
こっそりと家を出た。
その日の夜は適当な
ビジネスホテルに泊まった。
翌日、仕事は元々休みだったので
ホテルをチェックアウトすると
すぐにネットで探した
興信所に向かった。
興信所職員
「浮気の素行調査ですと、
少しお時間を
いただくことになります。
お辛いでしょうが、
耐えてください」
私
「どうぞよろしく
お願いいたします」
調査依頼を
済ませた私は、帰宅した。
家に着くともう
正午近くなっていた。玄関に
女物の靴は既になかったが、
決定的な瞬間を見るのが怖くて
恐る恐る寝室を覗いた。