浮気

夫と同じ職場で浮気をされ辞表を提出すると、夫以外の全員が震えだした【14】

 

そんなある日のお昼時、

私は夫の店に入って行った。

 

がらんとした店内には、

呆けたような夫とキホの姿が。

カランカランというレトロな

入店ベルでハッとしたのか、

夫が声を掛けてきた。

 

「いらっしゃいま…。

ト、トウ子?今頃なんで?」

 

そして私の背後にいる人物に

気が付き、ハッとした表情をする。

 

オーナー

「噂以上に

惨憺たる有様だな…。

 

ここまで落ちぶれるとは。

この有様、損害額も相当だが、

覚悟はできているかい?」

 

私と一緒に入店したのは、

本店のオーナーシェフだ。

 

口調は静かだが、それが余計に

オーナーの怒りを感じさせた。

 

夫は顔色を失い、

体をガクガクと震えさせていた。

 

オーナー

「君たちはクビだ。

出ていきたまえ」

 

重々しい解雇宣告。

だが、空気を読まない女がいた。

 

キホ

「ちょっと、いきなり

何なんです!?

えっらそうに!

この、クソオヤジ!」

 

「偉そうも何も、実際偉いのよ。

本店のオーナーシェフですよ?

口を慎んでください」

 

キホ

「オ、オーナーシェフって、

えぇっ!」

 

風船のように

オツムが軽いキホでも、

オーナーとは

何かくらいは知っていたらしい。

 

キホ

「あ、あの!

すみませんでした。

ちょっと口が滑っちゃって、

テヘヘ」