そんなある日のお昼時、
私は夫の店に入って行った。
がらんとした店内には、
呆けたような夫とキホの姿が。
カランカランというレトロな
入店ベルでハッとしたのか、
夫が声を掛けてきた。
夫
「いらっしゃいま…。
ト、トウ子?今頃なんで?」
そして私の背後にいる人物に
気が付き、ハッとした表情をする。
オーナー
「噂以上に
惨憺たる有様だな…。
ここまで落ちぶれるとは。
この有様、損害額も相当だが、
覚悟はできているかい?」
私と一緒に入店したのは、
本店のオーナーシェフだ。
口調は静かだが、それが余計に
オーナーの怒りを感じさせた。
夫は顔色を失い、
体をガクガクと震えさせていた。
オーナー
「君たちはクビだ。
出ていきたまえ」
重々しい解雇宣告。
だが、空気を読まない女がいた。
キホ
「ちょっと、いきなり
何なんです!?
えっらそうに!
この、クソオヤジ!」
私
「偉そうも何も、実際偉いのよ。
本店のオーナーシェフですよ?
口を慎んでください」
キホ
「オ、オーナーシェフって、
えぇっ!」
風船のように
オツムが軽いキホでも、
オーナーとは
何かくらいは知っていたらしい。
キホ
「あ、あの!
すみませんでした。
ちょっと口が滑っちゃって、
テヘヘ」