酪農家というのは
初めて聞いた。
てっきりサラリーマン家庭
だとばかり
思っていたので。
もう、そこからして
「話すのが遅い!」
と突っ込みたくなる
部分だった。
農業系は、昔から互助会を
形成して、困ったときは
お互い様精神で
やってきたと、
歴史の授業で
聞いたことはあった。
しかし、私は
農家育ちではない。
あくまで知識として
知ってるだけ、
実生活に関わりが
あるということなら、
全然話は違う。
ついていけないかも、
と少し不安になり始めた。
結婚について考え直す
チャンスだったと、今なら
そう思えるのだけど、
当時はまだシュウジとの
縁談に夢を見ていた。
多少の妥協は仕方ないと
いう心境に
至ってしまったのだ。
私
「あなたのご実家が、
後で付き合い上
困るというなら、
お母さまの要望に
お応えしてもいいよ」
シュウジ
「ありがとう、
トウ子!助かるよ」
心底からほっとした表情に
なった彼を見て、
酪農も大変なんだなと、
他人事的な感想を
持ったものだった。