私
「あの、まだ夫は出勤をしていない
ということでしょうか?」
私は思わず聞き返していた。
事務員
「マサヤさんは1カ月ほど、
体調不良でお休みをしていますが…」
事務員さんも困惑気味だった。
私はその場はなんとか
取り繕って電話を切った。
夕方、帰宅した夫に
どういうことかと尋ねようとした瞬間
夫
「俺、明日から出張だから」
と、突然言い出した。
私
「…え?」
夫
「急に決まったんだよ!
仕方ないだろ」
急に決まるも何も、夫は
今日どころかこの1ヵ月、
ずっと会社を休んでいたはず。
それなのに出張とは
どういうことだろう…?
私が疑問を口にする隙を与えず
夫
「3泊になる予定だから、
そのつもりでいてくれ。
あ、本当に大事な取引先と会うから、
何があっても連絡は入れるなよ!
電話はもちろん、
メールやLINEもダメだ!」
…と、念押しをして来た。
いくら鈍い私でも、これは
おかしいと思うしかない。
しかも、夫が私に投げてよこした
スーツの上着のポケットから
零れ落ちた物。
それは「休憩」のある
宿泊施設のものだった。
浮気、確定と判断。
私を裏切ったことを
絶対に後悔させてやると、私は決意した。
夫に気取られないように、
態度に出さないようにするのが
大変だった。
その晩、私は夫に
私
「明日から大事な出張なんでしょ。
もう寝たら?」
早めに就寝することを勧めた。