私の名前はトウ子。
30歳の主婦だ。
4歳年上のケンジと結婚して
4年目にしてやっと
子宝に恵まれた。
私は現在、里帰り出産のため
自宅から片道1時間ほど
離れた実家に帰省中。
結婚した時、新居を捜そうと
ケンジに相談したのだが、
ケンジ
「トウ子が
今住んでるマンションで
良くない?
家賃かからないなら、
そのほうがいいじゃん!」
と言われ、そのまま
暮らし続けていた。
初孫を待ちわびてくれている
両親のお世話になりながら、
地元の病院で無事に出産。
名前はヒロト。男の子だ。
ケンジは出産予定日に
「仕事の都合がつかない」と
立ち会い出産が
出来なかったので、
私はメッセージで
出産の報告をした。
しかし返ってきたのは
「出産おめでとう」の
一言だけ。
「お疲れ様」や
「ありがとう」などの
ねぎらいの言葉はなく、
さっさとメッセージの
やり取りを
切り上げてしまったのだ。
自分の息子が
生まれたという
実感はないのだろうか。
文句の一つでも
言ってやろうと思ったけど
仕事の繁忙期だと
言っていたのを思い出し
それ以上の会話を
続けるのをやめた。
出産から1か月後、
私はケンジが待つ
マンションへと帰ることに。
帰る時でさえ、
迎えに
来てくれることはなく、
父がマンションまで
送ってくれることになった。
ヒロトの顔をやっと
見せられる。
ケンジはどんな
反応をするかな?
父が運転する車の中で
ワクワクしていた。