だが、優しい姑が同居した途端に
豹変したという恐ろしい話も
聞かないわけではない。
義母がそんな人だとは
思いたくないが、
最悪の場合、嫁という立場では
孤立してしまう。
今の丁度良い距離感を
壊したくない私は、
即答を避けた。
私
「今の部屋の契約更新状況や、
諸々の手続きを確認してから
お返事させてください」
と笑顔で躱してきた。
その晩に夫に相談すると、
夫は乗り気だった。
夫は特に
マザコンというわけではない。
私は今の関係を壊したくない旨を
控えめに伝えた。
ダイチ「同居か!
いいじゃないか。
トウ子も心配するなよ。
おふくろだって自分の希望で
同居を申し出たんだからさ。
それに何かあったって、
俺はトウ子の味方じゃないか。
愛する妻を守るのが
夫の役目だろ?」
と、頼もしい返答が返って来た。
正直、この言葉で私は
夫に惚れ直したと言ってよい。
なにせ、私は背が高く
ガタイが良い。
体育会系で学生時代から男子に、
いわゆる「女の子扱い」を
受けることが
ほとんどなかったから、
ハートを射抜かれた。
一方、夫は読書や映画、
音楽鑑賞が好きな文科系。
こんな男らしい一面が
夫に有っただなんて…!
しかし、私は
気づくべきであった。
夫は次男で、長男の義兄も
健在なのに、なぜ我が家に
同居話が降って来たのかを…。