私はトウ子。
30歳の主婦で高校の同級生だった
夫(ダイチ)と結婚している。
子どもはまだいないけど、
近所に住む義実家まわりの
親戚とは仲良くやっていた。
そんな穏やかな日々は、
4カ月前に一度幕を閉じた。
優しかった義父が死んだのだ。
事故だった。
父を失った私の夫、
長年連れ添った配偶者を
亡くした義母は、あまりに
突然のことで呆然とするばかり。
葬儀の準備に追われている間は、
まだいい。問題はその後だった。
忌引きが明ければ仕事に戻り、
嫌でも現実と
向き合わなくてはいけない
私の夫とは違い
専業主婦の義母。
私もたまに様子を
見に行っていたが、義父の生前は
快活だった義母の覇気がない。
何につけても弱気になっている。
私は義母宅を訪問するたびに、
夫に報告をしていた。
ダイチ
「トウ子がよく顔を出して
報告してくれるから安心だよ」
と言ってくれていた。
しかし、ある日、義母の所に
ご機嫌伺いに行った時に
義母
「この家がこんなに
広いだなんて、お父さんが
いなくなってから
初めて知ったわ。正直、
寂しくてしょうがないの。」
私はもしや…?と思って
内心身構えた。
義母
「私ももう若くないし、
1人暮らしだと何かとねぇ…。
急な話で申し訳ないのだけど、
ダイチとトウ子さんが
一緒に暮してくれると心強いわ」
そう、同居の提案だった。
正直、義母は家事が得意で
気遣いもできる、
いわゆる良妻賢母な人だ。
同居をしても世間でいうところの
嫁いびりとは無縁の人に思えた。