元夫が私の視線を辿ると、
そこには鋭い目をしたマスターが。
普段は柔らかな物腰のイケてる
老紳士風のマスターだから、
余計に圧が凄い。
元夫
「お、おい。
何で店員が俺を睨むんだよ」
と夫は焦りつつも
小声になっている。
私
「そりゃ怒るでしょ。
大事な息子を貶されたら」
元夫
「え!?む、息子!?」
声が裏返る元夫。
私
「そうだよ。
ここは今の夫のご両親が
経営しているカフェなの!」
元夫をキッチンから睨みつける
今の義両親を確認して、
縮こまる元夫。
元夫
「やっぱ聞こえて…るよね?」
私
「全部筒抜けでしょうね」
そもそも、他のお客様が
いない状況を作るために小1時間ほど
貸切にしてもらっているのだ。
ただでさえバカでかくて
遠慮を知らない元夫の声が
聞こえていないはずがない。
元夫
「お前なぁ!
そういうことは早く言えって!
はぁ…俺、ちょっと
具合が悪くなってきた…」
図太く見えて
メンタルの弱い元夫は、
アウェイな環境に耐えきれず、
逃亡していった。
私とエマは義母のご自慢の
シフォンケーキを
ゆっくりと味わい、
お礼を言って店を後にした。