けれど、文系出身で運動とは
無縁の元夫の動きなど、
今もフットサルで
定期的に体を動かしている
婚約者にはお見通し。
アッサリと元夫の突進を
避けてしまった。
勢い余った元夫はそのまま
待合のパイプ椅子の
列に突っ込んだ。
そのまま伸びていれば
いいものを、
気恥ずかしさのせいか
元夫はパイプ椅子を
なりふり構わず振り回したり
ぶん投げたりと大暴れ。
その場は騒然となった。
婚約者は元夫が
息を切らした隙に背後から
取り押さえ、直後に誰かの
通報で駆け付けた
警察に引き渡された。
こんな騒動に巻き込んで
しまったにもかかわらず、
彼は私と結婚してくれた。
彼、実はナナちゃんママの
秘書をしている。
初対面は迷い込んだ
ナナちゃんを
ナースステーションに
連れて行った時。
私はナナちゃんの
パパさんだとここでも
早合点を発揮していた。
職場で再会し、お互いを
自己紹介してナナちゃん達と
苗字が
違うのでやっと気づいた。
ナナちゃんママの
後押しもあって、交際を始め
順調に結婚までたどり着いた。
現在、元夫のパイプ椅子
ぶん回し事件から、
既に3年が経っている。
その間、私は妊娠と出産を
経験し、今では親子3人で
慎ましくも幸せな日々を
過ごしている。
娘の無邪気な笑顔に
救われる毎日。
娘はクレヨンを
握るのが大好き。
保育園から持ち帰る
画用紙には、まだ丸や線の
連なりばかりだけれど、
それを嬉しそうに
見せてくれる姿に、
私の心は温かくなる。
これからもこの幸せを
守っていこうと思う。
終わり