雑談している流れで、
私は病気の発覚からこれまでの
ことをザッと
ナナちゃんママに話した。
ヘヴィーな内容だったので、
ナナちゃんママの顔を
曇らせてしまって
申し訳なかった。
私
「あ、でも今は色々
吹っ切れて、新しい仕事も
探し始めてるんですよ」
ナナちゃんママ
「それなら、
私にお手伝いさせてほしいな」
提案してくれた。
ナナちゃんママは実は実業家。
会社の事務さんが
退職予定とのことで
後任を探しているとこのこと。
病院通いについても
織り込み済みで、
事務作業なので
体の負担も少ないと。
こんなに好都合な話が
あっていいのかと驚いたけど、
私はナナちゃんママの言葉に
甘えさせてもらうことにした。
あの時偶然病室に
迷い込んできたナナちゃん。
あの出会いがナナちゃん
母子との長い付き合いの
きっかけとなった。
ナナちゃんママの
会社では病気に理解の
ある人たちに囲まれ、
気持ちよく仕事を
することができる。
そしてある程度仕事に
慣れた頃、私は実家から
出て一人暮らしを始めた。
幸せな暮らしが1年ほど
続いている中でも、服薬と
定期健診は欠かさなかった。
ある日、定期検診のため
病院の廊下を歩いていると、
背後から聞き覚えのある声が
私を呼んだ。
タケヒサ
「キヌ子?
キヌ子じゃないか!」
笑顔の元夫が立っていた。
私の心臓が嫌な音を立てた
…気がした。
あの刃傷沙汰以降、元夫と
会うのはこれが初めてだ。