モラハラ

病気が見つかり夫に見捨てられた私【6話】

 

しゃくりあげが収まった頃、

私は見舞いに来てくれた

母が差し入れてくれた

プリンとゼリーを両手に持ち、

 

「さ~て、お嬢ちゃんは

どっちが好きかな?」

 

と天秤のように左右で

上げ下げしてみた。

 

ナナ

「プリン!」

 

大きな声でそう答えてくれた

女の子にプリンを渡すと、

女の子は、

 

ナナ

「いいの?ありがとう!

えっと…

お姉ちゃんもご病気?」

 

とお礼を言って

質問をしてきた。

 

「ご病気?」という言い方が

小さいながらも

背伸びをしている感じがして

微笑ましい。

 

「そうみたい。

明日手術なんだって~」

 

他愛もない話をしながら

私達はごく自然に手をつなぎ、

病室からナースステーションに

向かっていった。

 

もし迷子ならそこが一番早く

確実に、この女の子の保護者に

繋がるだろうと思ったからだ。

 

廊下の角を曲がり

ナースステーションが

見えると、近くにいた男性が

すぐにこちらに

小走りでやってきた。

 

カズマ

「ナナちゃん!

どこに行っていたんだい?」

 

そう言えばこの子の名前を

まだ聞いていなかった…。

 

ナナちゃんって言うんだね、

パパと合流できてよかった。

 

「ナナちゃん、私の病室に

入ってきてしまって…」

 

カズマ

「それはすみませんでした。

あの部屋は

この子の母親が先日まで

使っておりまして…」

 

パパの表情が心なしか

曇った気がした。