しゃくりあげが収まった頃、
私は見舞いに来てくれた
母が差し入れてくれた
プリンとゼリーを両手に持ち、
私
「さ~て、お嬢ちゃんは
どっちが好きかな?」
と天秤のように左右で
上げ下げしてみた。
ナナ
「プリン!」
大きな声でそう答えてくれた
女の子にプリンを渡すと、
女の子は、
ナナ
「いいの?ありがとう!
えっと…
お姉ちゃんもご病気?」
とお礼を言って
質問をしてきた。
「ご病気?」という言い方が
小さいながらも
背伸びをしている感じがして
微笑ましい。
私
「そうみたい。
明日手術なんだって~」
他愛もない話をしながら
私達はごく自然に手をつなぎ、
病室からナースステーションに
向かっていった。
もし迷子ならそこが一番早く
確実に、この女の子の保護者に
繋がるだろうと思ったからだ。
廊下の角を曲がり
ナースステーションが
見えると、近くにいた男性が
すぐにこちらに
小走りでやってきた。
カズマ
「ナナちゃん!
どこに行っていたんだい?」
そう言えばこの子の名前を
まだ聞いていなかった…。
ナナちゃんって言うんだね、
パパと合流できてよかった。
私
「ナナちゃん、私の病室に
入ってきてしまって…」
カズマ
「それはすみませんでした。
あの部屋は
この子の母親が先日まで
使っておりまして…」
パパの表情が心なしか
曇った気がした。