ただ、入院目前だったため、
タケヒサ
「さすがに今から
新居を決めて荷物を移すのは
難しいだろう。退院後に
取りに来てくれれば
置いてくれて構わない。
ただ、この家に取りに
来るときには事前に
連絡をしてほしい」
と夫は言ってくれた。
けれど、同時に、
タケヒサ「それ以外に
関してはもう他人同士だ。
俺はお前の手術が
成功しようが予後が
どうであろうが
気に留めることはない。
病状の報告もいらない。
興味もない。
それが他人ってものだろう。
お互いに別の道を歩む、
それがベストだ」
とも。
戸籍上では
他人となったものの、
5年近くも夫婦として
過ごした相手にこうも
冷たくできるのか、と。
それほど私が病気に
罹ったことは、
私の非であったのだろうかと
疑問を感じた。
この理由は後に判明する。
告知を受けた時は
前向きな気持ちだった私が、
入院するときには
沈み込んで涙にくれる様子に
主治医は驚いたようだ。
おそらく手術や予後に対する
不安と思ったのであろう
主治医や看護師さんは
一生懸命に私を
慰めてくれたのが
却って申し訳なかった。
手術の同意書を記入し、
入院に付き添ってくれた
両親には既に
離婚の経緯を話していた。