ちょっとくらいの
気の迷いなら、
見て見ぬ振りも出来た。
ばれたと気づいて、
恥ずかしくなって、
慌てて謝るなら
許すつもりだった。
でも、DVはだめよ。
これだけは許せない。
ユイトの立場からしても、
許されることじゃない。
私
「やっちゃいけない事を、
やっちゃったね?」
ユイト
「それがどうした!
おまえ、うるさいんだよ。
これ以上、俺に
その不愉快な顔を見せるな。
今すぐ出て行け!」
私
「出ていけ?
それを言ったら
おしまいだけど?
…いいの?」
ユイト
「うるせえ!
出て行けっつってんだろ!」
私
「本当にいいの?
どうなっても
知らないよ?」
念押しすると、
壁を思い切り蹴られた。
あーあ、ひびが
入っちゃったよ。
ユイトは、
おまえもこうなるぞ?
と言いながら、
壁のひびを指さした。
私は、彼との夫婦生活は
ここまでだと覚悟して、
家を出た。
2年間の結婚に至るまで、
20年もの積み重ねが
あったのにね。
こんなにあっけなく
崩壊するんだ。
悲しいような、
寂しいような。
そうでもないような。
不思議な、ふわふわした
感覚を味わいつつ、
私は実家に帰ったのだった。