けれど、夫の表情は強張り、
病名を告げた後は
私の顔を碌に
見ることもなかった。
そして、翌日、
夫は帰ってこなかった。
さらにその翌日、
帰宅した夫から切り出された。
タケヒサ
「キヌ子、別れよう」
ショックだった。
タケヒサ
「俺も
協力するからさ」
というのは、風邪や
おできみたいに薬や
ちょっとした手術で完治する
病気限定だったみたい。
タケヒサ
「昨日、実家の
両親とも話し合ってきた。
その病気、遺伝する
可能性もあるんだよな。
だったら子供は望めない。
正直、俺も
俺の両親も子供の顔が見たい。
子供が望めない以上、
キヌ子と
一緒にいる理由はない」
「病める時も
健やかなるときも、生涯
お互いに支えあう」
という結婚式での誓いは
アッサリと破られた。
淡々とした夫の声と
迷いすらない眼差しに、
私も夫とこれ以上結婚生活を
続けていてもお互いに
良いことがないと悟り、
夫が用意していた
離婚届に判を押した。
当時暮らしていた家は
夫の名義だったため、
離婚後は私が出ていくことに。