許すくらいなら、猫なで声で
義母
「シン、いつも仕事で
疲れているんだから。
お茶でも飲んで、
ゆっくりしなさいよ」
だなんて、
玄関で言うはずはない。
諦めて、私はタンスに
手をかけた。
ずしっと重い。
ただでさえ年季が
入っている昔のものなのに、
どれだけ服を
詰め込んだのか…
異様に重い。
トウ子
「お義母さん、
やっぱり無理です。
重すぎですよ、これ」
義母
「だったら、中のものを
出せばいいだろう。
ついでに整理しておきな」
もしかして、
本当の狙いはそっち?
義母はさっさと
リビングに行った。
義母
「シン?
お茶のお代わりは?」
シン
「お茶より
コーラ飲みたい」
義母
「はいはい」
茶番としか思えない
やりとりが聞こえた。
ここまで露骨な差を
つけられても、夫は私を
庇いも手伝いもしない。
はぁ…
ため息が出る。
帰りたいが、あいにくと
義実家は交通の
利便性がとても悪い。
かなり昔に山の斜面を
開発した古い住宅街だ。