私はキヌ子。23歳の時に
1つ年上の夫、
タケヒサと結婚した。
夫の希望でしばらくは
子供を作らなかった。
その間、私はアパレルの店員
として仕事をする傍ら、
夫が気持ちよく
過ごせるようにと家事にも
手を抜かなかったつもりだ。
夫も、
タケヒサ
「ただいま。今日も
我が家は居心地がいいね」
と言って、私のことを
褒めてくれていた。
30歳が目前に迫り、
そろそろ本格的に
子供のことを考えなくては…
という時に、私を不幸の
どん底に突き落とした
出来事が発生。
詳細は伏せるけれど、
私は体に違和感を覚えていた。
夫に相談すると、
タケヒサ
「そりゃ、早く病院
で検査したほうがいいって。
俺も協力するからさ」
とのこと。
私はまず近所の
クリニックにかかり、
それから大きな総合病院を
紹介してもらって
精密検査をした。
20世紀なら即、死を
イメージするような
病名だったが、幸い発見が
早かったため、
手術と投薬治療で現代なら
長生きだってできると
医者からは説明された。
とはいえ、若いので進行が
早いかもしれないから、
油断は禁物だと。
病名を告げられた時は
絶望したけれど、医者の言葉で
前向きになれた。
だから夫にも努めて
明るく報告をした。
けれど、夫の反応は
私の予想と期待を裏切った。
タケヒサ
「ちょっと待って。
少し考えさせてくれ」
正直、
「きっと良くなるよ、
一緒に頑張ろう」という言葉が
欲しかった。